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地獄の黙示録 Apocalypse Now

◆地獄の黙示録   Apocalypse Now

 1979年 アメリカ映画(カラー)です。

ベトナム戦争体験を小説化したジョセフ・コンラッドの小説
「闇の奥」を下敷きに、「ビック・ウェンズディー」のジョン
・ミリアスが最初に脚本化し、コッポラが足かけ四年、三千万
ドルをかけてやっと完成させた超大作。

カンヌ映画祭ではグランプリを獲得したが、本国アメリカでは
賛否両論が渦巻きました。

◆ストーリー

精神的に問題がある特殊工作員”ウィラード大尉”に下された
指令は、「私情を捨ててカーツ大佐を処刑せよ」というものだった。

敵ではなく味方を殺す指令である。その優秀な軍歴を見込まれ
現地民を組織して訓練する任務を与えられていたカーツは軍との連絡を
断ち、カンボジアの奥深くに自らを神と称し、原住民を戦士として独自の
王国を築いたのだという。

指令を受け、哨戒艇で河をさかのぼるウィラードと部下4人。
目的地に向かう彼らの前に、展開される混乱、異常、退廃された
戦争の実態・・・・

◆見どころ

オープニング、ウィラード大佐が奇妙な運動をしながら鏡を
叩き割り血まみれで泣き叫ぶシーン。

この時点でこの映画の異様な熱気がヒシヒシと伝わってきます。

食事をしながら、カーツ大佐を処刑せよと、平然と言い放つ
軍上層部の役人たちの異常さも凄い。
(若き日のハリソン・フォードもいます。)

ヘリ部隊が「ワルキューレの騎行」と共に突撃するシーンでの
ナパームの投下で数十キロのヤシ林が一瞬に火炎地獄になるシーンは
凄絶な映画美です。

ローリングストーンズの「サディスフィクション」を聴きながら
水上スキーを楽しむアメリカ兵。

並べられたベトナム兵士の死体の上にトランプカードを一枚ずつ
置いていくキルゴア大佐

ヘリコプターで慰問するバニーガールに熱狂するシーン

夜の闇に浮かびあがる米軍最後の拠点ド・ラング橋の死しか
残されていない絶望的な美しさなど

この超大作は、印象的な名シーンが満載された映画です。
これはコッポラ監督の才能の素晴らしさの証明であるのですが
にもかからわず、決定的な傑作の評価がくだされませんでした。

それはなぜでしょうか?

こういう超大作の場合、どのような結末をむかえるのが非常に
大切ですが、コッポラ監督は自分が納得するラストのシナリオ
を遂に見つけられなかったのですね。

coppola.jpg
フランシス・フォード・コッポラ監督

次から次と浮かび上がるアイデアをシナリオ化しつつ撮影していた
コッポラ監督に、カーツ大佐を演じたマーロン・ブランドは
「彼は映画を撮っていない。」と言い残し、現場を離れていって
しまったそうです。

主役が去ってしまった監督は、撮り終えたフィルムを使いながら
ラストシーンを繋がねばならなかったのです。

あの非常に難解なラストシーンには以上の理由があったわけです。
非常に聴き取りにくいブランドの会話。様々な解釈がなされた牛
の惨殺シーン。

どんな意図と思考があろうとも観客に披露された映画には、
わかりやすくなければ大衆芸術である映画としては不十分と
いわざるをえないわけです

個人的には、非常に熱のこもった監督の叫びが聞こえてきそうな
この超大作は大好きですが、それだけにこの賛否両論の評価は残
念です。

若き日のハリソン・フォードが上層部の役人役、「マトリックス」
のローレンス・フィッシュバーンがウィラード大佐の部下の一人
で出演しています。ウィラード役のマーティン・シーン、キルゴア
を演じたロバート・デュパルはともにベスト演技です。

◆当時の話題

1979年のアカデミー賞で、本作は作品賞他8部門でノミネート
されましたが、受賞は撮影賞、音響賞の2部門のみで終わりました。
すでにカンヌ映画祭グランプリを受賞していたわけですが、実は
カンヌとオスカーは相性が良くありません。
カンヌは作風を重視しますが、オスカーはクセの強い映画をあまり
好まないのです。

◆主なスタッフとキャスト

監督:フランシス・コッポラ/脚本:ジョン・ミリアス/
   フランシス・コッポラ
原作:ジョセフ・コンラッド
撮影:ヴィットリオ・ストラーロ/音楽:カーマイン・コッポラ

出演:マーロン・ブランド/マーティン・シーン
   ロバート・デュパル/デニス・ホッパー

Posted by guide : 18:13 | Comments (0) | Trackbacks (0) | Page Top ▲

ジュラシック・パーク Jurassic Park

◆ジュラシック・パーク  Jurassic Park

       1993年 アメリカ映画 (カラー)

  名作「シンドラーのリスト」が批評家の絶賛を浴びた
同じ年、スピルバーグ監督は、もう1本、
マイケル・クライトン原作のベストセラー小説
ハラハラ・ドキドキ恐怖映画「ジュラシック・パーク 」を
作り上げます。
  まさに八面六臂の大活躍をした年だったのです。

◆ストーリー

変わり者の億万長者”ハモンド”が辺境の島に究極のテーマパークを
完成させ、古生物学者の”アラン・ハモンド”、”エリー・サトラー”、
数学者”イアン・マルコム”、ハモンドの孫”ティム”、”レックス”を内覧の
ために招待する。

   パークには、発掘した琥珀に残っていたDNAから作られた本物の
恐竜が、生きていた。

  理論上は万全の安全体制のはずだったが、だがオープンを控えたその
“ジュラシック・パーク”に次々とトラブルが襲いかかる。
肉食恐竜の予想外の知能とDNAを売り飛ばそうとした1人の職員のために
パークは阿鼻叫喚につつまれる.......。

◆見どころ

   最初は草食のおとなしい恐竜などを登場させ、その圧倒的CGIの威力で
観客を引きずり込む巧さ。そして台風がきて、電子フェンスが停電し、肉食恐竜が
闊歩しはじめていることを、観客にはわからせるが、主人公たちにはわからせない
サスペンスの巧さ。

jurassicpk.jpg

   ティラノザウルスがジープを見つけ追いかけるシーンのスピード感と恐怖は
全篇の白眉ともいえる名シーンです。名作「ジョーズ」より数段怖い恐怖です。

jurassicpark.jpg

デビュー作「激突」のシンプルな怖さに匹敵します。そしてラスト、食堂で孫たちが
ラプトルから逃げ回るシーンのリアル感と怖さは比類がありません。

実は、この映画脚本に大きな穴があります。数学博士マルコムのエピソードが
それで、まるでつじつまがあわないのです。それでなのでしょうか。
とにかく、恐竜のSFXを見せまくります。観客がその穴に気づく前に一気に
ラストまでもっていってしまうのです。笑

スピルバークは、「未知との遭遇」、「E・T」などのハートウォーミングな作品も
もちろんうまいのですが、彼の本質は、パニックやサスペンス演出の巧みさにあります。

「激突」、「ジョーズ」の演出をみれば、わかるとおり、おそらく怖がらせることにかけては
当代随一の名監督でしょう。

◆主なスタッフとキャスト

監督・・・スティーヴン・スピルバーグ
製作・・・キャスリーン・ケネディ/ジェラルド・R・モーレン
原作・・・マイケル・クライトン
脚本・・・マイケル・クライトン/デヴィッド・コープ
撮影・・・ディーン・カンディ
特撮・・・デニス・ミューレン/スタン・ウィンストン/フィル・ティペット/マイケル・ランティエリ
            ILM
音楽・・・ジョン・ウィリアムズ

出演
サム・ニール・・・・・・・・・・・ アラン・グラント
ローラ・ダーン・・・・・・・・・・ エリー・サトラー
リチャード・アッテンボロー・ ジョン・ハモンド
ジェフ・ゴールドブラム・・・・ イアン・マルコム
ウェイン・ナイト・・・・・・・・・  デニス・ネドリー
サミュエル・L・ジャクソン・・ レイ・アーノルド

Posted by guide : 17:45 | Comments (0) | Trackbacks (0) | Page Top ▲

羊たちの沈黙 The Silence of The Lambs

◆羊たちの沈黙 The Silence of The Lambs
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    1991年 アメリカ

◆ストーリー

FBIの訓練生クラリスは、主任捜査官クロフォードから
元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクター博士に接見する
任に選ばれる。

その任務とは、全米を震撼させている女性を殺害しその皮
を剥ぐという連続猟奇事件に関して、彼の示唆を受けよう
というものだった

訓練生ながら、優れた素質をもつクラリスに獄中のレクター博士は
興味を持ち始め、彼女に事件解決へのヒントを示唆しはじめる・・・・

◆みどころ

この映画を、ホラーとして分類していた映画誌もありましたが
やはりサイコ・サスペンスの部類でしょう。

そして、確かに怖い映画です。
またこれはまぎれもなく傑作です。

レクター博士は、クラリスに興味をもちますがなかなか自分の
考察情報をあたえません。その提供と引き換えにクラリスに
子供時代の記憶を話すことを強要します。

この二人の心理的やりとりが、暗い独房のガラスを隔てて
行われますが、いつのまにか二人には微妙な連帯意識的なものが
生まれていきます。ジョディ・フォスター、アンソニー・ホプキンスの神技とも
いえる名演技です。

抑制の効いたデミ監督の演出も怖さを増幅させています。
demi.jpg
犯人役のテッド・レヴィンも、あまり話題になりませんでしたが
迫真の演技です。

◆気になる役者さんたち

ジョディ・フォスター・・クラリス・スターリング
アンソニー・ホプキンス・ハンニバル・レクター

映画の名演技は数多くあれど、主演二人ががっぷりと組んで繰り広げられる
名演技はなかなかありません。本作の二人の演技はその稀有な一作です。
レクターの目に宿る狂気と知性はクラリスに宿る幼少時のトラウマを察知して
彼女にそれを打ち明けるようにしむけます。
クラリスはレクターの洞察力におののきながら、そして幼少の子羊たちの記憶の
恐怖と戦いながら、必死にレクターから情報を引き出そうとするのです。
この二人の心理的やりとりの様は、ほんとうに見事です。

◆主なスタッフとキャスト

監督:ジョナサン・デミ 
原作:トマス・ハリス 
脚本:テッド・タリー 
撮影:タク・フジモト 
音楽:ハワード・ショア 
 
出演:ジョディ・フォスター・・クラリス・スターリング
  :アンソニー・ホプキンス・ハンニバル・レクター
  :スコット・グレン・・・・クロフォード主任捜査官
  :テッド・レヴィン・・・・バッファロー・ビル
  :アンソニー・ヒールド・・チルトン医師
  :ダイアン・ベイカー・・・マーティン上院議員

Posted by guide : 13:06 | Comments (0) | Trackbacks (0) | Page Top ▲

おもいでの夏 Summer of '42

◆おもいでの夏

    1971年/アメリカ(カラー)です。

◆ストーリー

15歳の夏、ハーミー(ゲーリー・グライムス)は第二次大戦の戦火から
逃れるため、ニューイングランドの沖合いに浮かぶ美しい島にきていた。

彼はその島で、オシー(ジェリー・ハウザー)とベンジー(オリヴァー・コナント)という
友人を作りいつも3人は、退屈な日々を終日海辺で暮らしていた。

彼らの好奇心は、もちろん性への欲求が強く、旺盛な好奇心を湧きたたせていた。
ある日、3人は小高くなった丘にポツンと建つ家の前で、新婚の若い夫婦が楽しげに
語らっているのを、遠くから眺めていた。

ハーミーの目には、その美しい新妻の横顔が鮮明に焼きついて離れず、ただ呆然と
小さな家を眺めていた。翌日、桟橋でボートに跳び乗ったハーミーの目に昨日の
美しい女の姿が映った。

彼女は、戦場に向かう夫を見送りに来ていたのだ。彼女のドロシー(ジェニファー・オニール)と
いった。・・・・・・・

◆見どころ

「1942年の夏、僕たちは沿岸警備隊の詰所を4回襲った。
 五本、映画を観た。九日間雨が降った。ベンジーは腕時計
 をこわし、オシーはハーモニカを吹かなくなった。そして僕
 は、あの十五歳のハーミーを永遠に失ってしまった。」

セックスへの好奇心、年上の女性への憧れ、そして体験と
思春期映画の典型的パターンを踏襲しながら、みごとな哀感を
表現した名作です。

スーラーの点描画を彷彿させるロバート・サーティーズの撮影はおそらく
撮影カメラノレンズに何かをかぶせて撮ったのでしょう。この風景の
美しさにまずしびれてしまいました。また当時の人気映画音楽家
ミシェル・ルグランの哀切なテーマ曲は今でもお気に入りの映画音楽です。

なんといっても、ラストのハーミーとドロシーのダンスシーンと一夜をともに
過ごすシーンの静けさが素敵でした。

勇気だめしでコンドームを買うくだりも、当時の自分にはとても気持ちが
理解できた名シーンでもあります。

ロバート・マリガンの知性と穏やかで優しさ溢れる演出は、気持ち
の良い映画とはどういう映画なのかを、端的に教えてくれます。

地味ですが、アメリカ映画珠玉の一作といえます。

◆気になる役者さんたち

ドロシー役を演じた、ジェニファー・オニールは結局これだけが
印象に残った作品となってしまいました。憂いをおびたあの面影は当時の
思春期だった映画ファンには、忘れられない一人となっているでしょう。

当時の話題 以下は

出典: 1971年とは
- フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

1978年のその他の代表映画 

北米

   1. ある愛の詩
   2. Little Big Man (Little Big Man)
   3. おもいでの夏(Summer of '42)

第44回アカデミー賞

    * 作品賞 - フレンチ・コネクション
    * 監督賞 - ウィリアム・フリードキン(フレンチ・コネクション)
    * 主演男優賞 - ジーン・ハックマン(フレンチ・コネクション)
    * 主演女優賞 - ジェーン・フォンダ(コールガール)

◆スタッフと主なキャスト

監督:ロバート・マリガン
脚本:ハーマン・ローチャー
撮影:ロバート・サーティーズ
音楽:ミシェル・ルグラン

出演:ジェニファー・オニール /ゲイリー・グライムス
   ジェリー・ハウザー/オリバー・コナント

Posted by guide : 21:24 | Comments (0) | Trackbacks (0) | Page Top ▲

卒業 1967年 アメリカ映画

◆卒業

    1967年/アメリカ(カラー)です。

graduate.jpg
◆ストーリー

大学を優秀な成績で卒業したベンは、家に戻っても将来のビジョンが
何も見つけられず、虚無的な生活を続けていた。両親が開いた卒業パーティーで
そんな彼を誘惑しようとする、親の友人のロビンソン夫人。

一度はその誘惑を振りきったベンだっだが、彼女の誘惑は強い刺激となってしまい
数日後、今度はベンのほうからデートを申し込んでしまう。こうして2人はその後
しばしばホテルで会うようになるが、ロビンソンの娘エレーヌが学校休みで戻って
から大きくくずれていってしまう。

何も知らない両親の勧めで、初めはいやいやながらエレーヌとつき合ったベンだが
その可憐さ、清純さに次第に彼女を本気で愛するようになってしまう。
しかし、ロビンソン夫人が二人の仲を認めるわけもなく・・

◆見どころ

ラストでの花嫁盗み出しシーンが、当時若者達の大喝采をあびて大ヒットしました。
しかしこのラストを含め映画の内容は、年配者からはちょっと疑問視されています。

新感覚の演出とみずみずしいサイモン&ガーファンクルの音楽で優しくオブラード
されてはいますが、この映画の題材は、両親と年の違わない人妻との不倫そして今度は
その娘との恋愛なのです。こうして文字にするとかなりとんでもない内容であることが
わかります。

この映画が公開された67年、当時は性はまだスキャンダラスなものという考えで
あり、ハリウッド映画がこれほどセックスをあけすけと語り、しかも通常では
考えにくい三角関係に焦点をあてたことはありませんでした。

かって、アメリカ映画の伝統のジャンルであった家庭映画の道徳観、倫理観や
暖かさは、まったく消えうせてしまいシニカルで、ペシミスティックな
冷ややかさでこのロビンソン一家の崩壊を描いています。

舞台演出で修練を積んだマイク・ニコルズ監督の代表作となった作品です。

また、もうひとつ「卒業」が生んだ独創性が音楽の使い方でした。

サイモン&ガーファンクルという人気デュオのすでにレコード化してあった
「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロー・フェア」などに加え
映画用として作られた「ミセス・ロビンソン」などを効果的に使用しています。

当時の映画のなかでも、はっきりとターゲットを若者の感性に絞った戦略で
あり、後の映画サウンドトラックに大きな影響を残しました。

◆気になる役者さんたち

ダスティン・ホフマン・・(ベンジャミン・ブラドック役)

この暗い題材の前半で、笑いを誘う名演をみせた主人公ベン。
卒業といえば、あのラストシーンが有名ですが、彼の真骨頂は
アン・バンクロフトに初めてデートを申し込み、ホテルのフロントで
右往左往するシーンなどの奇妙なおかしさにあります。
ずんぐりむっくりでさほど美男子とも言えない彼は、この後
「真夜中のカーボーイー」で、ニューヨークに巣くうちっぽけな麻薬売人を
演じ、一気に名優として開花していくのです。

また、若き日のリチャード・ドレイファスが後半アパートの住人役で
登場します。気をつけていればすぐにわかりますよ。

当時の話題 以下は

出典: 1967年とは
フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より

1967年のその他の代表映画    

第40回アカデミー賞

    * 作品賞 - 夜の大捜査線
    * 監督賞 - マイク・ニコルズ(卒業)
    * 主演男優賞 - ロッド・スタイガー(夜の大走査線)
    * 主演女優賞 - キャサリン・ヘプバーン(招かれざる客)

◆主なキャスト・スタッフ

監督:マイク・ニコルズ /脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム
原作:チャールズ・ウェップ   
撮影:ロバート・サーティース
音楽:ポール・サイモン /デイヴ・グルーシン

出演:アン・バンクロフト /ダスティン・ホフマン
   キャサリン・ロス

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